古来、人類がブラシのようなものを使い出して3000年を超えるようだ。
日本でも13世紀の始めには既に歯、口を清浄する道具として楊枝のようなもので磨いていた。歯ブラシとして使われるようになったのは明治初頭のようである。
形としてはストレートの柄にクジラの髭が埋め込まれているもので機能としては現在のものと、なんら変わりはない。また、磨き方も基本的には現在とほぼ同じ磨き方であろう。近年では歯周病対策として毛先磨法がおもに主流である。
私が歯科医になった40年も前から様々な磨き方があり考案された大家の方々の名前が付いた歯ブラシもたくさん市販されている。
時代と共に磨き方は数多く生まれた、スクラビング・バス・フォーンーズ 毛先法などなど。
そのたびに振り回されてきたという感じがする。最近の毛先磨きは細分化され一層難しくなっているようだ。
歯磨きは複雑な口の中に異物を入れるわけであるためどうしても難しい。
とりわけ子供や高齢者には・・
私自身の経験では小学生の高学年までは親が手助けをしてやらないと歯磨きは難しいと思っている。その親でさえ磨き方を知らない人は多い。
また教えても通院が終われば元の磨き方に返ってしまう。
要するに歯磨きは難しくて中々身につかないというのが現状なのだ。
ここで少し話しを変えてみたい。
ひげを剃るのに「ストレートのかみそり」よりT字型の安全かみそりのほうが危険なくよく剃れる。
複雑な形をした口腔内にも同じことが言えないだろうか。ヘッド部をT字型にして適度な毛を施してやれば汚れ(歯垢)もよく落とせるはずである。T字型ならば届きにくい奥歯の奥、前歯の裏にも大変よく適応させることが出来る。
汚い例であるが便器は口腔内によく似ている。ストレートのブラシでは掃除がしにくい、少なくとも筆者はそう思う。
T字型が生まれたきっかけはごく単純なことだった。
歯の教科書に「前歯を縦に磨く方法」が記載されており、実際にやってみるとストレートの歯ブラシではとても無理があった。
このことがヒントになり、「そうだ!ヘッドを横にしてはどうだろうか」と思いつた。T字型にすることで前歯を縦に磨くことがずっと容易になった。歯間部にも毛先が入りやすくなり、歯周病予防には大いに役立つはずである。
また手首の返しが少なくて済む。
ここで、T字型の特徴を他にも幾つか挙げておく。
●お子さんの歯を磨く時正面から磨ける、
●前歯を縦磨きする際の特徴として上下の唇の緊張が普通のブラシより強いため『口輪筋』のエクササイズになる。
●わきが上がらず楽な姿勢で磨ける
●グリップ部を太くしてあるため、誰でも持ちやすいユニバーサルなデザインとなっている。
●介護の際、前歯の裏を磨いても磨き汁が飛んでこず、衛生的である。
●横幅が少し広いため舌ブラシとして大いに活用出来る。
要するにT字型歯ブラシは人間工学的にも大変合理的な磨き方が会得できるようになっている。まさに究極の磨き方が出来る「口の形に対応する進化したブラシ」と言っても過言ではないだろう。
物事には「男と女」「上と下」「白と黒」のように常に対極するものが存在する。
ブラシにも正対する「−→+」があってもなんら不思議ではない。既存のブラシで磨く限り常識と言う慣性の法則からは抜け出せない。縦のものを横にするだけで全く違った世界が見えてくる。私の確信と信頼を持ったT字型歯ブラシが、常識と言う価値観に対峙する歯ブラシとして必要とされるものになって欲しい。